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炭素繊維も有害?2025年4月10日

 

炭素繊維(カーボンファイバー)は、鉄やアルミニウムに比べて非常に軽量

でありながら高い強度を持つため、自動車のチューニングパーツや

ヘルメットなど、幅広い分野で活用されています。


たとえば、ポルシェ・カレラカップに使用されるレース車両では、

ドアパネルにカーボンが採用されており、その軽さは驚くほどです。

車体から取り外せば、小指一本で持ち上げられるほどの軽さなのです。

しかし近年では、ついにこのカーボン素材にも規制の波が及び始めています。

 

 

私が自動車のブレーキ関連の企業に入社したのは1990年のことでした。
当時、建築業界ではすでに鉄骨の吹き付けなどへのアスベスト(石綿)の使用は禁じられていましたが、自動車業界、とりわけブレーキ部品においては、アスベストはまだ広く使用されており、ブレーキパッドやライニングには欠かせない素材とされていました。

アスベストは熱に強い繊維素材であり、パッドの成形に非常に適していたのです。

 

 

 

当時は、アスベストの危険性についての認識もまだ十分とは言えず、昼休みになると工場内のサイレンが鳴り、作業員たちがそれぞれの現場から食堂に向かって集まってくるのですが、その頭髪や作業服はアスベストの粉じんで真っ白になっていたのを覚えています。

顕微鏡で見ると、アスベストの繊維は針のように尖っており、それが肺に刺さると聞いていました。しかし、手で触ると綿のように柔らかく、当時は「これが本当に危険なのか?」と半信半疑だったのも事実です。

 

 

 

 

 

 

 

私は研究開発部門に所属しておりましたので、アスベストに代わる耐熱材の開発にも携わっていました。
当時は、デュポン社の「ケブラー・パルプ」をベースとした代替材の研究が進められていました。

加えて、ガラス繊維の活用も検討されていましたが、こちらは熱には強い反面、繊維同士の結束力に欠け、成形にはあまり向いていないという特性がありました。

 

 

 

 

一度、ガラス繊維が腕に大量に付着した際、手でさっと払った直後に腕が真っ赤になり、無数の湿疹ができた経験があります。
そのとき、「これはアスベスト以上に危険ではないか」と、肺に入った際の影響を想像してゾッとしたことを今でも鮮明に覚えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、ガラス繊維はマフラー内部の消音材としても使用されます。

マフラーを切断すると、内部の一部に大量のガラス繊維が矢印部分に

詰め込まれているのが確認できます。

私はそのガラス繊維をすべて取り除き、代わりに石綿を封入し、

その量を調整することでマフラーの音質を楽しんでいました。

私の愛車、シロッコ16Vは、まさに「いい音」を奏でていたものです。


仕事が終わった後、工場でポカールカップカーとシロッコ を思いのままに

いじるのが、何よりの楽しみでした。

 

 

 

ポカールカップカーは 工場に置かしてもらってました

 

 

 

7年間の勤務を経て、私は「ヴェンチュラー」を立ち上げました。
振り返れば、その会社で働かせていただいた期間は、まるでお給料をいただきながら専門学校に通わせていただいていたような時間でした。会社には大変感謝しております

 
 

 

 

今でも時折、「石綿救済被害者関係」に関する郵便物が自宅に届くことがあります。
あの時代に触れてきた素材が、こうして後年まで影響を及ぼしていることを、あらためて実感する日々です。